ただ風のように


俺は身体中の激痛で目が覚めた。


「……ってぇ。どこだよ、ここ」


辺りを見渡してみると病室らしかった。俺の右腕には点滴のチューブが繋がれている。


そこへ誰かがドアを開け中に入ってきた。


「お!!目覚めたか」


「誰だ、あんた?」


「覚えてねぇの?お前の命の恩人だよ。名前は遊汰。よろしく」


ニカッと歯を出して笑うその人は自己紹介してきた。


この声……どこかで。


「お前、昨日の!!ほっとけって言っただろ」


「気絶したヤツが何言ってんの。どっか痛いところは?」


「身体中、いてぇに決まってんだろ。あんだけ殴られてんだから」


「悪態つけるなら大丈夫だね。お前の名前は?」


「安西(アンザイ)海頼」


「みらいって漢字は?」

「海に頼るで海頼」


「ふーん」


「なんでお前、ずっとここにいんだよ?」


こいつの飄々とした態度が気にくわなくて俺は早く出ていって欲しいと思った。


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