ただ風のように
「え?あ、大丈夫です」
まさか見惚れていたとは言えずに下を向いた。
「ほら、海頼。夏々海ちゃんが気にしちゃっただろ。謝りな」
「すいません」
「本当に大丈夫ですから!!」
「夏々海ぃー。1on1やるよー」
ちょうど良いタイミングでコーチが呼びにきてくれた。
「はい。今、行きます」
「お?男子らにいじめられてんの?あんたらも暇だねー。年下捕まえて」
コーチはニヤニヤしながら先輩達と私を見て言った。
「違いますよ!!」
先輩がムキになって否定した。
「はいはい。主将なんだからしっかりしなよ、遊汰(ユウタ)」
あ、遊汰先輩って言うんだ。私に名前聞いて自己紹介してくれないんだもん。
「はい」
「じゃあ、夏々海連れてくね」
「じゃあねー。夏々海ちゃん」
私は遊汰先輩にペコッと頭を下げてコーチの後ろについていった。