ただ風のように
ボールが床に着いたとき、1年のみんながコートを見ていた。その中でも穂乃香ちゃんはあっけにとられたような顔をしていた。
「夏々海ちゃん」
彩華ちゃんが声をかけてきた。
「何?」
「どうしてあんな動きができるの?ボードにあの距離からボールをぶつけたら跳ね返りも強くなるはずなのに、しっかりキャッチしてそのままシュート決めるなんて……どうすればいいの?」
彩華ちゃんが戸惑うように聞いてきた。
「……よく分かんない。彩華ちゃんのディフェンスを抜けそうになかったからドリブルしても取られると思ったから、さっきみたいに動いただけなんだ」
実際にシュートを決めるのにどんな動きが一番、効率がいいか考えたらそれしかできなかったというのが事実だった。
「そっか。でもすごく綺麗な動きだったよ」
「ありがとう」