ただ風のように
そう言うと海頼先輩はカーテンの外に出ていった。
「海頼、夏々海の様子は?」
コーチが海頼先輩に聞いた。
「まだ起きないです。顔色も良くないですし」
「そう……。私、今日この後に会議があるの。海頼、悪いんだけど」
「俺が家まで送りますよ」
「助かるよ。ありがとう。じゃあ、よろしくね。亜美には先に帰るように言っておくから」
「分かりました。じゃあ、お疲れ様でした」
海頼先輩はコーチを送り出してカーテンの中に入ってきた。
「もう目、開けていいよ」
私はゆっくり目を開いて、海頼先輩に質問した。
「どうして、コーチに嘘ついたんですか?」