ただ風のように


「……え?」


「どうせまた、中学のときみたいに続かないんだから早く辞めて勉強に専念したら?」


それを言ったのはお母さんだった。


「母さん、夏々海は成長したんだ。今度は続くよ」


お父さんがお母さんに言った。


「続く訳ないじゃない。成長したって変わらないこともあるわ。これは翔や空みたいに才能がある訳じゃないんだから」


「母さん!!」


「……ごちそうさま」


お父さんがお母さんを怒ろうとしたとき、私は立ち上がりダイニングを出た。


「夏々海、待ちなさい!!」


私はお父さんの声を無視して階段を駆け上がり部屋に入った。


私は机の引き出しからカミソリを取り出して左腕に当て何度も力まかせに思いっきりカミソリをひいた。


腕が汚くなるのにたいして時間はかからなかった。そんなときドアの向こうから自分を呼ぶ声がした。


「夏々海!!何してんだ!?入るぞ」


翔くんの声だった。


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