ただ風のように
私は腕を隠し携帯と財布を持って部屋を飛び出した。
「夏々海!!待てよ」
一瞬の出来事に不意をつかれた翔くんはワンテンポ遅れて、私を追いかけた。
私はその間に階段を降りて廊下を走り、玄関で靴を履くと外に出てまた走り出した。
私はただ走り続けた。風のようにただ走った。学校近くの公園についたとき私はその場に座り込んで泣いた。
泣きながら震える指でアドレス帳を開いて、電話をかけた。
1コール、2コール……6コール目でその人は電話に出た。
「もしもし?」
「せ、んぱ……い」