ただ風のように
「え?どうしたの?泣いてる?車の音聞こえるけど今、どこにいるの?」
「公園、にい……ま、す」
私は走ったうえに、泣きすぎて上手く息ができない状態で答えた。
「……分かった。とりあえず落ち着いて、そこにいて。すぐ行くから」
「ごめっ、な……さい」
「謝らなくていいから。少しだけ待ってて」
そこで電話は切られた。私はすぐそばにあるベンチに移動しようと立ち上がったとき、足下がふらついた。
止血もせずに全力で走ったうえに泣いたのだ。酸素が身体中に行き渡らないし、血も足りない。
左腕を見ると袖が真っ赤に染まり、地面に向かって血が落ちていた。