ただ風のように
海頼先輩の部屋は階段を上がって右に行った先の突き当たりにあった。
「入って。ソファーにでも座って待ってて」
海頼先輩はそう言うとドアを開けたまま廊下を引き返し、階段を降りていった。
私は言われた通り、ソファーに座りじっとしていた。
開きっぱなしのドアから下の階の会話が聞こえてきた。
「海頼。あの可愛い子は彼女?」
先輩のお母さんの声だ。
「マジで!?海頼、彼女できたの!?すげー見てぇ!!」
「うるせーよ。兄貴、彼女いんだろ。他の女に興味持つなよ」
「否定しないってことは彼女ってことか。お兄ぃもやるねぇ」
「お前ら、本当にうるさい。騒がしいから部屋に来んなよ」
海頼先輩はそう言って、また階段を上がってきた。