ただ風のように
海頼先輩は片手に救急箱、もう片方に濡れタオルを持って部屋に入ってきた。
「傷の手当てするから腕、出して。事情は後から聞くから」
私は貸してもらった上着を脱いで言われたとおりに左腕を出した。海頼先輩は巻いていたタオルを外してくれた。
「血は止まったみたいだね」
そう言うと今度は濡れたタオルを取り出して血で汚れた腕を丁寧にふき、ガーゼに消毒液を染み込ませて傷の上にあてていった。
「染みたらごめんね」
ひととおり消毒が終わると大きめのガーゼを傷の上に当て、その上から包帯を巻いてくれた。
「これでよし。服、貸すから着替えなよ。俺はこれ、下に置いてくるから」
先輩はそう言うと、部屋着のような服を上下置いて、持ってきたものを持って部屋を出ていった。