ただ風のように
「夏々海!?今、どこにいんだよ!?急に出ていって、何してんだ!?」
電話の外にも漏れそうな大声で怒鳴られた。
「……西高の先輩の家」
「そうか。とりあえず、誰かの家にいるんだな!!心配させんなよ」
「ごめんなさ」
謝ろうとしたとき、不意に携帯が取られた。
「もしもし。西高2年、男子バスケ部、副主将の安西海頼と言います。夏々海さんを預かっています」
振り返ると海頼先輩が私の携帯を使って自己紹介をしていた。
「え?夏々海さんから聞いてませんか?夏々海さんと2週間前から交際させていただいている者です」
……え?交際?交際って付き合ってるってことだよね。どうしてそんな嘘……?
「……あぁ、はい。そうですか。分かりました。では、失礼します」
海頼先輩はそう言って電話を切り、携帯を私に手渡した。