狂信者の谷
三 聖地への道
 騙された。

 紅は、半月前になるポクン・ポーラーの女主人が仕事を依頼しにきたときのことを思い出し、頭の中で罵った。

 何が、おいしい話よ。こんな事ならカムランを連れてくるんだった。しかし、仕事の条件でカムランの同行は許されなかった。

 カムランがいれば、従者を雇うとき、ラムヤのような不穏分子や役立たずの二人、戦士のザハと荷役のツギンも雇うことはなかっただろう。

 すでに、最初の襲撃からまる一日が過ぎていた。

 あれから一度だけ襲撃があった。

 夜中だ。

 襲撃部隊は、十人程の規模だった。

 しかし、紅が野営地に仕掛けた罠と結界で半数を失い、退却した。

 紅は、その辺りがどうも気に入らなかった。

 暴れ足りないと言うわけではない。狂信者があっさり引き上げたという意味が納得できなかった。

 ジパドは温和で融合的なハダ密内において唯一排他的で攻撃的な結社だ。

 その教義を簡単に言えば、ハダ密以外の排除だった。

 特に、ジパド勢力下の異分子に対しては徹底している。
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