小話の寄せ集め
夕食時は、成田家が勢揃いする場だ。
じいちゃんの
『いただきます』
を合図に、静かな夕食が始まる。
「今日の成果は。瑪瑙」
「はい。今月の―――」
そう。夕食時にはじいちゃんが孫たちそれぞれにこうして一日を聞いてくる。これが日課で。
「うむ。瑪瑙、真珠、翡翠、黒曜、瑠璃。
くれぐれも成田の名に恥じぬ行いを」
『はい』
ここまでが私が居候する前のパターン。
で、新しいパターンはこのあとに…
「さて。しーちゃんは今日なにか楽しいことがあったかな?」
今までの威厳はキレイさっぱり空中霧散し、かわりに出てきたのは孫に甘い祖父の顔だ。いつも思うけど、なんだこの落差。
つか『楽しいこと』って…幼稚園児か!
「んー、特にかわりなく過ごしてるよ!
今日も朝から突然鬼ごっこしてみたり、何故かAKBを友達と踊ってみたり、授業中に頭脳バトル・勝ち抜きテストを開催してみたり…
普通に過ごしたよ!」
「ちょっとマテ。六組はいつもそんなことしてんのかよ」
「え、うらやましい?うらやましい?スイくん!」
「いや別に」
「隠さなくってもいいのにー」
「……。(確かにシズクとは一緒にいたい)」
「(顔に出てるよ、スイ…)」←真珠
色々突っ込みどころ満載な一日を披露したのに、じいちゃんは相変わらずにこにこだ。
「元気なのは良いことだ!さすがはワシの孫!」
「あら貴方。わたくしの孫でもありますよ。
でも本当にどうしてあんなに殺伐とした娘からこの孫が生まれたのかしら…不思議ねぇ」
「うむ。水恵は殺伐としてるからなあ…やっぱり洋太くんの遺伝子だろうな」
「三条の家にはそれはもう感謝してもしたりないくらいですね。こんなに愛らしい孫を生んでくださって」
……………。もう、諦めですよ。
唯一の女の子ってだけで大分贔屓されてますね私…。
他人に聞かれたら、きっと爆死します。