バレンタイン・プロミス
裕之は本当の弟ではない。
いわゆる義理の弟というやつ。
私の両親は私が裕之ぐらいのときに離婚した。
それから数年後、私が中学生の頃、母親が再婚。
義理の父親は小さい二歳ぐらいの男の子を連れていた。
その子が裕之だった。
裕之の母親は裕之を出産と同時に亡くなったそうだ。
裕之も体が弱くて、毎週のように深夜、病院に運ばれていたらしく、その病院で私の母が看護師として働いていたことが再婚のきっかけだったそうだ。
中学生という微妙な時期に親が再婚し、義理の弟ができたからか、私は裕之への接し方がわからなかった。
だから近づいて来る裕之を避けていた時期があった。
それから二、三年たった今ではそれは改善されたが、今も裕之はその壁を感じているかもしれない。
さっき裕之が私が裕之のことを嫌いなんだと言ったとき、その頃のことが頭を過ぎった。
…今度、裕之にチョコレートでも作ってあげようかな。
私はそう思うとワースチョコレートを三箱持ってレジに向かった。