バレンタイン・プロミス
「千代子ーっ日本史の教科書貸してー」
周りはチョコレートで浮かれているというのに、一人、なんの色気もない話題をもって私に向かってきた。
幼なじみの彰だ。
「はい」
私は日本史の教科書をだして朝日に渡した。
「ありがとうーッ」
彰はそう言うと片手で謝って隣の教室に帰って行った。
「ありがとう、か」
私は鞄からワースチョコの箱を出し、チョコレートを一粒口に入れた。
後ろを向くと教室の隅で話している朝日と目があった。
朝日は少し驚いてニッコリ笑った。
それにつられて珍しく笑い返してしまった。