SWEET AIR
「ここが教室棟だよ。一年生は三階。毎朝大変になんだよねー…。」
へにゃ、と少し困った笑みを浮かべる先輩…
(やばい……めっちゃドキドキするっ…!
優しいし、顔ももろタイプだぁ~…)
そう。ボク、男だけど、男の人が好きなんです。
それが原因で、中学では虐められちゃったりして。
だから誰も知り合いがいない土地に逃げてきた。我ながら格好悪いんだけど…
少しでもマシなほうへ進みたかった。
「あ、ありがとうございました…ボクまわりに知ってる人いなかったんで、すごく助かりましたー」
嘘つきました…知ってる人いないんじゃなくて、あえて知らない人ばっかのとこ来たんです…。
先輩は素直に驚いて、
「そうなの?他県からなんだ?」
「はい」
「大変だね…慣れないこと多いかもしれないけど、頑張ってね。
またね♪」
先輩はそう励ましてくれて、二年生の教室にいってしまった。わずかな優しさが心を潤してくれる…
(……名前、聞き損ねちゃったな…また会えるとも限らないし…
いいか)
惜しいことしたな…と思いつつボクは同級生と思しき子達が慌ただしく階段を上がるのを、気だるくついていった。
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