ちいさなたからもの
視界に映ったのは、海だった。



綺麗だな、と言うのが率直な感想だ。



潮騒と、鳥の声が聞こえる。



吹き抜ける風が、気持ちよかった。



視界の端に、ひとりの男性を捉えた。



歳は、30代前半くらいだろうか。



まっすぐに、こちらを見ていた。



「やあ」



「え、あ・・・こんにちは」



急に挨拶されたから、少し驚く。



「・・・成瀬浩平君、だね」



「・・・どうして、俺の名前を?」



疑いの目で、男性を見る。



「いや、何。きみのお父さんから、連絡をもらってね。今日、ここできみを待つように、と」



「・・・・・・」



・・・父さん。



いったい、何をたくらんでるんだ。



こんなところで、何をさせようって言うんだ。



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