ちいさなたからもの
「ある日、弟は探し始めた。



幸せになれるという四葉のクローバーを。



同級生の女の子がそんな話をしているのを聞いたからだ。



弟は、草のあるところをくまなく探した。



川沿いだって探した。



途中で、転んで泥だらけになったりした。



けど、弟は探し続けた。



四葉のクローバーを見つければ、少女が笑顔になってくれると思っていたからだ。



きっと、喜んでくれる



そう、信じた。



そして、ついに見つけた。



四葉のクローバーを。



弟は、軽い足取りで家に帰った。



家に帰ると、少女がちょうど家に帰ってきたころだった。



走って、少女の元へと向かった。



少女は弟の汚れた姿を見るなり、こらっ、と叱りつけた。



けど、弟には関係なかった。



見せたいものがあったから。



どうしてこんなに汚れたの?と訊いてきたから、弟は四葉のクローバーを差し出して、こう言った。



おねえちゃんがしあわせになるために、よつばのクローバーみつけてきたんだ、と。



それを聞いた少女は、答えた」



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