ちいさなたからもの
叔父さんは、ふぅ~っとタバコの煙を吐いた。



「どうかな、この昔話は」



「・・・・・・」



・・・泣きそうだった。



いや、泣き出したかった。



自分が、情けなかった。



桜を、半年間も放り出して・・・



なんて、ひどい兄貴なんだろう、俺は。



「俺は、母さんと、同じ立場に立ってるんです・・・」



「ああ」



「まったく、同じなんです・・・」



「・・・ああ」



「母さんは、幸せを取り戻したのに・・・俺は、弱くて、情けない人間です・・・」



「・・・・・・」



「俺は、まるでダメな兄貴です・・・」



「・・・それは、本人に訊いてみたらどうかな」



「え・・・?」



叔父さんが、後ろを振り向く。



俺も、それをみて後ろを見る。



視界の先に、いた。


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