ちいさなたからもの
「・・・ぬいぐるみね、なくしちゃった」



泣きそうな顔だった。



「バカ。あんなヘンなの、いいだろ。今度、プレゼントしてやるからさ・・・」



「・・・・・・」



「だから、いいよ。今度、また買ってやる」



「でも、あれは、おもいでだから・・・」



「何の」



「おにいちゃんといっしょにいったりょこうで、おにいちゃんがえらんでくれたものだから・・・」



知らなかった。



そんな思いで、桜があんなものを持っていたなんて・・・知らなかった。



「・・・じゃあ、桜には、大事なものなんだな・・・」



「・・・うん」



「あとで絶対、おにいちゃんが見つけてやるからな・・・」



「・・・ホント?」



「ああ、ホントだ」



こいつは、ずっとあれを持ってたんだから。



・・・大切な思い出。



・・・家族3人の。



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