ちいさなたからもの
「どうして」



「パパがね・・・おにいちゃんがないていいっていうまで、ないちゃダメだって・・・」



そうか・・・



こいつは、ずっと、我慢していたんだ。



列車の中でも、そうだった。



「ああ・・・もう、我慢しなくていい」



だから、そう言ってやった。



「泣きたかったら、泣いていいんだ」



「・・・・・・」



桜は、泣き出した。



わんわん、と。



ずっと、我慢していたのだろう。



俺を必要とする存在が、ここにいた。



俺は抱きしめた。



ちいさなたからものを。



幸せは、ここにあった。



たいせつなものが、あった。



幸せは、ひとつだけじゃないんだ。




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