愛玩子猫のしつけ方
そう言いながら小走りでやって来たのは、この間にこちゃんに声をかけた教育実習生……だっけ?
「………きゃあ…っ!?」
「………!!?」
駆けてきた拍子に、その先生が足を躓き、俺に向かってすがり付くように倒れてきた……っ。
「……ご、ごめんなさい…!」
「………はぁ…。」
先生が顔を上げて俺から離れる。
その顔は気まずそうに俺の制服のネクタイに注がれる。
嫌な予感にそれを見れば…………
「本当に…ごめんなさいね……!」
「…………。」
べったりと……紅い口紅が……………。
マジ……ついてない。
クリーニングを…と言う先生を制止して、ネクタイを引き抜いた。
替えはあるし……何かもう使う気しないから捨てよ………。
まとわりつく香水の匂いから……無駄に不愉快だった。
「………やっぱり弁償するわ。怒ってるでしょう……?」
黙る俺に先生は様子を窺うようにそう言った。
「………いいえ。元々こんな顔なんで。……これ、頼まれた物です。」
俺はそれだけ言うと先生にさっさと資料を渡して踵を返し……早く帰ろうと足を踏み出した時…………
背後で、微かに笑う声がした…………。
「…………?」
ゆっくりと振り返れば………不適とも言える笑顔の先生がいて
俺の目をどこか面白そうに見つめたまま…その口を開いた。
「…………ねぇ…、あなたの可愛い彼女……。確かそっちに行ってるんだけど………、会わなかった?」