大切なもの



千湖と僕の席は近いけど遠い。

窓際に座る千湖は僕の席からは見えない。
右斜め前。



多分、千湖の姿が見える席なら、どんな授業でも起きていられるだろう。





いつも見る夢。
灰色かかった昔。

君が僕に助けの手を伸ばした。
僕はその手を掴めなかった。掴まなかった。








「千鳥、起きなさい」


『ちぃ君、起きてよ』


うん、起きるよ。
君の為に……。




「起きるね、ちいこ」




< 20 / 103 >

この作品をシェア

pagetop