大切なもの



ここが木の上だとか、修復不可能な傷付ける言葉を吐いたとか、そんな事は頭から抜け落ちていて…――


尚も近付いてくるちいこを押した。
軽く。
決して強くない力で。


「……きゃっ!」


けれど、ちいこにとったら予想だにしなかった力であって、身構えることさえしなかった訳で。




スローモーション。



尚も伸ばしてくる手を、僕は掴むことが出来なかった。

助けてあげることが出来なかった。




――…僕が突き落としたんだ。


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