大切なもの



「もうよろしいでしょうか?」

「……うん」



お嬢様な雰囲気をもつ前を歩く女の子は、今朝会った子にどことなく似ている。


呼び方とか。



「ここなら誰も居ませんね」


着いた場所は中庭に面した林の中。
近くにある池にはアメンボが沢山居すぎて気持ち悪い。


「用は?」


「あら、前置きとか無いのですね。
私が思っていた通りのお方」


うっとりとした顔で笑う女の子は何を考えているのか測りかねる。


「千鳥様?
わたくしに少し、脅されてみませんか?」


たけど、今黒く見えるその笑顔は……悪魔に見える。
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