大切なもの
「……何言っ「千鳥様に長所はありすぎますが、短所は少なすぎます。
だから、数少ない弱点をわたくしはつくのです」
一歩一歩、草を踏みしめながら近付く。
「大事な大事な温室で育った女王様は、さぞかし寒さに弱いでしょうね?」
気持ち悪いアメンボだらけの池の縁に、ゆらついた体を支える為に手を置く。
「何をっ、」
「わたくし、橋本 悳(メグム)と申します。
今日からあなた様のたった一人の彼女です」
断る言葉は許されない。