大切なもの




「高嶺千湖ちゃんのご両親でしょうか」


手術着を着た女の人が手術室から出てきた。


「はい。
千湖は、どうなんでしょうか!
無事ですか!?」

「はい、大丈夫ですよ。
ですが……」



言葉を濁す女の人はお医者さんみたいだ。



「目立たないようにと気を付けたのですが、傷口が大きくてですね。
何ヵ所か傷が残るでしょう」


それだけで済んだんだ。
ちいこは死なない。
……良かった。

勝手に安心していた。
ちいこが女の子だという事も忘れて。
< 9 / 103 >

この作品をシェア

pagetop