大切なもの
「高嶺千湖ちゃんのご両親でしょうか」
手術着を着た女の人が手術室から出てきた。
「はい。
千湖は、どうなんでしょうか!
無事ですか!?」
「はい、大丈夫ですよ。
ですが……」
言葉を濁す女の人はお医者さんみたいだ。
「目立たないようにと気を付けたのですが、傷口が大きくてですね。
何ヵ所か傷が残るでしょう」
それだけで済んだんだ。
ちいこは死なない。
……良かった。
勝手に安心していた。
ちいこが女の子だという事も忘れて。