大切なもの
放課後。
あれからいつも通りな千鳥に戸惑いながら、平静を装ってやっとの放課後だ。
「千湖、部活行こう」
「……うん」
憂鬱だ。
今日は嫌な事が続く。
「顔色悪い。
……帰ろうか?」
心配そうに覗き込む。
「っ、顔近い!!」
千鳥の息で前髪が揺れる。
「あぁ、ごめん」
そうやって離れられるのも物悲しい。
「……帰る?」
眉を下げる千鳥を見ると、愛しさが込み上げてきて、
「……帰る」
我儘だってわかってる。