羊の皮を被った狼。



「ねぇ、なにをしてるのって俺は聞いてるんだけど?先輩達…」


くるりと振り返ると……はるちゃんが居た。


ん…?じゃあ今の威圧感がハンパない恐ろしい声はどこから…?



「す、鈴野くん!!」


声ががらりと変わる先輩達。
はるちゃんは見た目がかわいすぎるせいか、全校のアイドルだからだ。



おいおい!先輩達の方が媚び売ってるじゃないか!!



「ち、違うのよ??これは…く、栗原さんが」


え。アタシですか!!


先輩ははるちゃんの肩に触れた。否、触れようとした。


触れようとした手ははるちゃん自信によって払われた。



「俺に、気安く触れないでくれる?」



いつものかわいい天使の様な笑顔はどこにもなく、ダークスマイルではるちゃんは言い放った。


え……?誰、この人。
まさかはるちゃんじゃないよね!?

あははははまっさかー…ゆ、夢?



「なによ!どいつもこいつも!」


先輩は衣装をアタシからぐいっと引っ張った。
そのせいで…



ビリッ



衣装は腹部あたりから敗れた。それも、手直しできないくらい大きく。




「あっ!!…あ、アタシ…こんなつもりじゃ…」



サーと青い顔になっていく先輩。


「はぁ…君は救いようのないバカだね…」



はるちゃんんん!?
仮にも相手は先輩ですよ!?




はるちゃんは携帯を取り出し、どこかに電話し始めた。



「もしもし、俺だけど…うん。実は折り入って頼みがあるんだけど、今日の公演で使うはずだった衣装がどっかのバカのせいで使い物にならなくてね…1時間以内に用意して欲しいんだけど

え?在庫がない?だからなに?用意できなかったら…どうなるか…わかってるよね?」



えぇぇえぇぇ!!マジ誰っスか!!一人称も僕から俺になってるし!!


先輩達も超怖がってる。



「そう…うん、それでいいよ。よろしくね」


ピッ


はるちゃん…あなた一体何者ですか??



「ふふ、驚いてる浬もかわいいね」



…これは…夢?



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