Fahrenheit -華氏-
それからが大変だった。
泣き続ける綾子を宥めるのに必死だった。
綾子はちっとも泣き止まないし、秘書課の連中が何事か顔を出して妙な誤解を受けるしで。
女って……
どうしてこうなんだろう。
どうして恋なんかに一生懸命になれるんだろう。
どうしてそんなに苦しい思いをしてまで、相手のことを好きでいられるのだろう。
一方で好きな男と結婚するって決まったのに、何で悩む必要があるのだろう。
女って……
わかんねぇ。
だけど一つだけ言えることがある。
誰かの幸せは誰かの不幸の上に成り立ってるってことを。
全員が全員幸せになるってことは…
やっぱり無理なんだろうか。
それともこんなことを考える俺はやっぱりまだまだ甘いのかなぁ。
それとも俺がまだその幸せの意味を掴めていないからなのか?
幸せって何―――