Fahrenheit -華氏-
「何だよ?」
俺が訝しんで裕二を見た。
「ファーレンハイト……」
「は?俺の使ってる香水がどうかしたのかよ」
「いや……違う。アメリカのファーレンハイト社…」
裕二は手に取った雑誌の表紙を見ながら目を開いてる。
「ファーレンハイト……?」
ファーレンハイト……ファーレンハイト社……
俺は記憶を掘り起こした。
「あぁ。ニューヨークにある物流会社だ…」
同業者だけど、ファーレンハイト社は確かそれ一本でかなり本格的に手を伸ばしてる会社だ。
それなりの大手で業績も安定していた。
5、6年前、各経済誌で勢いが有り急成長を遂げた会社だと取り上げられてたっけ?
最近ではめっきりその名を聞かなくなったけど。
「何ですか、それ…」
古新聞の束を紐で縛っていた佐々木も何事か立ち上がる。
「柏木さんが……載ってる…」
「「は?」」
裕二は俺と佐々木にその経済誌を見せた。