Fahrenheit -華氏-
あ!やべっ!!
今日は裕二に頼まれてた合コンの日だったー。
すっかり忘れてた。
せっかくの金曜だってのに、全くついてないぜ。
どうせなら柏木さんとデートをしたいっつの。
俺は早々と片付けをして、帰り支度をした。
柏木さんは相変わらず電話をしたり、パソコンを操ったりで忙しそうだ。
「柏木さん、ごめん。今日用があるんだ。先に帰ってもいい?」
柏木さんはキーボードに滑らせていた手を止めて、ちょっと顔をあげた。
「デートですか?」
え?
いつもなら、「分かりました」ってそっけないのに。
もしかして、気にしてくれてる?
「んー……ちょっとね」
俺はわざと返事を濁してはぐらかせた。
「そうですか。お疲れ様です」
ガクリ…
何だよぉ。相変わらず冷たいなぁ。
いいもん。俺合コン行っちゃうからね。そんで女の子たちにもてもてでお持ち帰りして……
―――ってそんな気分にもなれねぇ…
早々に切り上げて帰るつもりだったから、酒を飲むつもりもなかった。
だから俺は車を飛ばして、裕二の言う表参道の店まで向かった。