Fahrenheit -華氏-

■Anger(怒り)


――――

――


週が明け、月曜日



ヤバイ!ヤバイやばい、やばい……


柏木さんに他の女とのキスシーンを見られた。


俺は今日どんな顔して柏木さんに会えば……?


「おはようございます」


柏木さんの声がして俺は飛び上がらんほどびっくりした。


「お、おはよ…」


柏木さんは相変わらずのマイペースで椅子に腰掛ける。


俺は横からそっと柏木さんを伺った。


「……あ、あのぅ柏木さん。金曜日のことだけど……」


柏木さんは一瞬何のこと?と言った風にキョトンとした。


え……?もしかして俺だって気づいてなかった??


しかし、すぐにちょっとだけ目を細めると、


「ああ、車でのことですね?」とそっけなく答えた。


やっぱり――――!!


俺だって気づかれてた!!!


「気にしないでください。私誰にも言いませんから」


と相変わらずの冷たいお言葉。


「いや…あのね…」


それでも何とか弁解したくて俺はあたふたと手を動かせる。


「別に私も気にしていません。部長がどこで何をしようが勝手ですから」



< 142 / 697 >

この作品をシェア

pagetop