Fahrenheit -華氏-
だから分かって?
俺は最後にそう締めくくって、柏木さんの手をゆっくり離した。
「部長……」
柏木さんは手首を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる俺を見上げた。
無言で席について、はっ!となった。
ちょっと!ちょっと、ちょっとちょっと!!
今の発言ってかる~く告白っぽくない!!?
俺、何言っちゃってるの!
しかもさりげなく腕とか掴んじゃったし!!
かんっぜんに嫌われた―――
言った手前、落ち込むわけにも行かず何事もなかったかのように仕事を始めたが、内心ドキドキが治まらなかった。
「部長……」
柏木さんがもう一度俺に問いかける。
「はい!何でしょう!!」
くっそう!柏木さんの前ではとことん格好がつかない俺…
声ひっくり返ってるし…
「ありがとうございます」
柏木さんはにっこり微笑んだ。
それは今までの微妙な笑みじゃない。
俺が始めて見る本当の微笑み。
まだこぼれるような明るい笑顔じゃないけど、それでも―――
やっぱり柏木さんは可愛い―――