Fahrenheit -華氏-
■Kiss(キス)
―――
チュンチュン…すずめの鳴き声が窓の外で聞こえる。
「く……朝日が眩しいぜ。ウェルカム土曜日って感じだな…。ね、柏木さん」
「はい。そうですね」
憧れの人と一夜を共にした―――って言やぁ響きはいいんだけど…
「やっと終わりましたね。見積書と納品書の作成」
柏木さんはマイペースに書類をトントンと揃えている。
「ふわっ…疲れた~」
柏木さんの目の前で大きな欠伸をして、伸びをしている佐々木。
そう―――
結局三人で徹夜をしてしまいました。
昨夜、本来なら柏木さんと佐々木を帰すつもりで熱弁したのに、二人を理解させるどころか、やる気の火をつけてしまったようだ。
まぁ一人でやるより断然早く終わったけどね。
佐々木は何度目かの大きな欠伸を漏らすと、
「すみません。ちょっとだけ…」と言って机に突っ伏した。
よっぽど疲れていたのだろう、すぐに心地良さそうな寝息が聞こえてきた。
「柏木さんもお疲れ様。今日はもう帰ってゆっくり休みな」
「いえ。昨日の遅れがありますから私はまだここに残ります。部長はお気になさらず、帰ってください」
これからまだ仕事するのかよ。
柏木さんってすごいな。
感心する。
いや、感服した―――