Fahrenheit -華氏-
てか暑い!!
エアコンの入れてない部屋は何でこんなムシムシして暑いんだ。
おまけに夏の手前の長い梅雨の時季ときている。
鬱陶しい極まりない。
前述した通り俺は体温が高いので、夏は嫌いだ。
俺はシャツを腕まくりすると、ついでにネクタイも緩めた。
柏木さんは涼しい顔で汗一つ浮かべずにぎっちり詰まったファイルの書棚に目を向けている。
「柏木さん、暑くないの?」
「私は冷え性なので……08、09…あった。10年のファイル」
俺の言った言葉に軽く答え、天井まで伸びた書棚の上の方を指差す。
探していたファイルは一番上の段に陳列していた。
「あー、こりゃ俺でも背伸びして届かないワ。その辺に踏み台あったよね?」
俺がキョロキョロと辺りを見渡すと、
「私が乗ります。届かない位置でもないので」と木製の脚立を引っ張り出してきた。
いつの間に……
てか、そんなんあったんだ。
「いや。俺が乗るよ。危ないから」
俺の言葉に柏木さんがちらりと俺を見上げ、
「いいえ。私が乗ります。部長が落ちたら私は支えられないけど、私が落ちたら部長は支えてくれますよね?」
「うん。もちろん♪」
って言うか、むしろ落ちてくれ。
んでもって、どさくさまぎれにぎゅ~と抱きしめられたら♪
ウェルカム柏木。
は!いかん、いかん。
落ちるときに柏木さんが怪我したら可哀想じゃん。
と言いつつもちょっと期待をしながら俺は脚立の脚を持った。