Fahrenheit -華氏-
俺は柏木さんに―――
キス
していた。
柏木さんの唇は柔らかくて、さらりとしていて……ほんのり甘い香りがした。
不思議だな。
ファーストキスの記憶なんて普段思い出せないのに、今はこんなにもはっきりと、初めてキスしたときの気持ちを鮮明に思い出せる。
ドキドキして…それでいて、暖かい……
唇を離すと、俺は真正面から柏木さんを見つめた。
柏木さんは驚いたように目を開いている。
少しの沈黙が降りてきて、やがて柏木さんの方が先に口を開いた。
「部長……」
その声ではっとなった。
やっべー!!!ついっ!!ついっヤッてしまった!
『何するんですか!!』バッチーンってな具合で殴られることを覚悟していたけど、柏木さんは意外な言葉を俺に投げかけてきた。
「部長は私のこと好きなんですか?」