Fahrenheit -華氏-
■Greeting(挨拶)
――――
「裕二~!」
週明け、早速俺は裕二の階に行って、奴の部署を訪れた。
「何だよ、やけにご機嫌だな」
俺のにこにこした態度を気味悪がって裕二が表情を歪めた。
「ふっふっふ。賭けは俺の勝ちだな」
「何!お前…!!」
裕二がガタンと椅子を鳴らして勢い良く立ち上がった。
システムの連中がそんな俺たち二人を訝しげに見上げてくる。
「ここじゃまずい。喫煙ルームにでも行こうぜ」
裕二は苦い表情をして、シャツの胸ポケットからタバコの箱を取り出す仕草をした。
「なん…お前、とうとうヤッたのか…」
裕二の問いに俺はえへらえへら笑った。
タバコを吸いながらだったので、煙が変な風に途切れた。
「ちっ。俺だって柏木さんと同じ部署ならな~」
と言いながらも銜えタバコをしながら、尻ポケットからブランド物の札入れを取り出す。
そしてその中から諭吉様を二枚取り出し、俺の目の前にかざした。
「ほらよ」
「例え同じ部署だってお前にゃ無理だって」
すっかり勝った気分でいる俺はにやりと笑って、諭吉様に手を伸ばした。
「で……どうだった?」
俺が札を取ろうとすると、裕二は真剣な表情で俺を覗き込んだ。
裕二……怖えぇよ。