Fahrenheit -華氏-

「じゃあ後は宜しく」


そう言って人事部長は去っていった。


後に残されたのは俺たち二人+佐々木。


「あ……、まぁとりあえず席をご案内しますよ。どうぞ」


俺は外資物流のたった三セット固められたデスクの群れを指した。


柏木さんはぺこりと一礼すると、無言で俺の後ろに着いてきた。


柏木さんのデスクは、入り口から奥の場所。


その向かい側が佐々木。


んで、俺が二人の席を見渡せるような、いわゆるお誕生日席。


俺がそれぞれに席に案内すると、柏木さんと佐々木は大人しく席に着いた。


「異動になって落ち込んでたけど、こんな綺麗な人の向かい側だったら全然良いです」


佐々木がにこにこ笑顔を浮かべながら、俺にそっと耳打ちしてくる。


「……そうだな」


俺は曖昧に返事を返した。


心の中では佐々木と同じようにラッキー♪と思っていたが。


「あれ?反応薄い。そりゃまぁ部長ほどかっこよければ、女の人なんて選り取りみどりでしょうけど」


佐々木がちょっと口を尖らせる。


いやいや、佐々木クン。


俺だってこんなに可愛い子が来るなんて思ってなかったのよ。


それにしつこいようだが、超☆タイプなわけで。


これはがっつりいかねばならんでしょ。




「でも……同じ社内だからなぁ」


佐々木が思い出したように呟いた。








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