Fahrenheit -華氏-

「え?平熱…?えーと…36度5分くらいかな?」


「華氏に換算すると、97.7°Fですね」


華氏……つまりファーレンハイトのことだ。


「はぁ……」


それが何か……?と思ったら、柏木さんは俺の肩に頭を預けてきた。


栗色に染め上げたつやつやした髪が俺の頬をそっと撫でる。


柔らかそうな髪からシャンプーの良い香りが漂ってきた。


唐突なその行動に俺は思わず固まった。



え……?



えぇ!!



これってもしかしてイイの?俺行っちゃってイイの??




どうする俺!?



固まったまま硬直していると、テーブルに置いた柏木さんの携帯が突如鳴り響いた。


柏木さんはちょっと俺から頭を離すと、ゆっくりした動作で携帯を手にした。


え?このタイミングで鳴る?


っていうか誰だよ!こんな時間に!俺たちの甘い(?)時間を邪魔しやがって!!


そんな怒りを覚える反面、俺の中にふとあることが過ぎった。





俺が取り間違えた電話。




“M”の存在だ。




< 201 / 697 >

この作品をシェア

pagetop