Fahrenheit -華氏-
「え?平熱…?えーと…36度5分くらいかな?」
「華氏に換算すると、97.7°Fですね」
華氏……つまりファーレンハイトのことだ。
「はぁ……」
それが何か……?と思ったら、柏木さんは俺の肩に頭を預けてきた。
栗色に染め上げたつやつやした髪が俺の頬をそっと撫でる。
柔らかそうな髪からシャンプーの良い香りが漂ってきた。
唐突なその行動に俺は思わず固まった。
え……?
えぇ!!
これってもしかしてイイの?俺行っちゃってイイの??
どうする俺!?
固まったまま硬直していると、テーブルに置いた柏木さんの携帯が突如鳴り響いた。
柏木さんはちょっと俺から頭を離すと、ゆっくりした動作で携帯を手にした。
え?このタイミングで鳴る?
っていうか誰だよ!こんな時間に!俺たちの甘い(?)時間を邪魔しやがって!!
そんな怒りを覚える反面、俺の中にふとあることが過ぎった。
俺が取り間違えた電話。
“M”の存在だ。