Fahrenheit -華氏-
柏木さんの肌にキスをしたり触れたり……
その合間に「瑠華」と呼ぶと柏木さんは、ちょっとくすぐったそうに首を捩っていた。
やがて行為が白熱すると、柏木さんは息を乱し始めた。
白い顔を紅潮させ、息が上がっている。
すごく綺麗で色っぽい顔に、俺の方も急き立てられる。
そろそろかな……
本番を考えて、俺ははっとなった。
顔から血の気が失せていくのが分かる。
サー……
「……どうしたんですか?」
くっついていた柏木さんの体をべりっと引き離し、俺は彼女を真剣な眼差しで見据えた。
「“あれ”忘れた……」
「“あれ”……ですか……」
柏木さんは一瞬「何のこと?」と言う感じで、首を傾げていたが、やがて「ああ……“あれ”ね」という表情を造った。
「「……………」」
気まずい沈黙が降りてきて、俺は額に嫌な汗をかいた。
くっそぅ!ついてない!!
俺の方も最近ご無沙汰だったから、持ち歩いてなかったのだ。
「はぁ」
俺はため息を吐いて柏木さんの胸元にこつんと顔を置いた。
まったく……ついてないぜ………
こんな間抜けな展開ってある!!