Fahrenheit -華氏-
「へ……?いいって…?」
びっくりして、俺は顔を上げた。
柏木さんはちょっと目をまばたいて俺を見ていた。相変わらず無表情で何を考えているのか全く読めない。
「……それって安全日だってこと?」
探るように目だけを上げて柏木さんを見た。
「まぁそんなところです」
柏木さんは曖昧な返事をしてちょっと眉を寄せた。
「いや……気持ちはありがたいけど……」
大体女の言う“安全日”ほど当てにならないことはない。
柏木さんのことを疑っているわけではないけど、万が一ってことも有り得る。
「やっぱ今日は止めよう」
俺は諦める方向で、腕をつくと起き上がろうと上半身を持ち上げた。
「信用してないって顔してる」
柏木さんは意地悪そうに口の端をちょっと上げると、妖艶に微笑んだ。
「いや…そういうことじゃなくて……」
俺の考え読まれてる……
さすがだな。柏木 瑠華。
「絶対に大丈夫ですよ。だってあたしクスリ飲んでますから」