Fahrenheit -華氏-
* Side Ruka *
.。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.
目覚めは唐突にやってきた。
予期せぬ目覚めにあたしは、ほんのちょっと訝しんで目をこじ開けた。
覚えのある香りに包まれて、とても温かい体温に抱きしめられていた。
昨夜は―――
眠りがすごく心地よかった。
睡眠薬を飲まずにこんな風に眠りに入れたのは、一体どれぐらいぶりだろう……
薬を飲んでないから、頭も体も妙にすっきりしている。
でも……
「重い……」
体に僅かな重みを感じて、あたしは顔をしかめた。
目を上げると、目の前に部長の寝顔がある。
前にも一度見た寝顔……
部長に抱っこされてる……いまいち状況が把握できていなくてあたしはぐるぐると色んなことを考えめぐらせた。
「ああ、そっか……」
一人納得すると、あたしは部長の腕からするりと抜けた。
まだ眠い瞼をぱちぱちさせながら、
「……何でまだいるのよ…」と冷めた言葉が思わず洩れる。
昨日の熱い余韻はすっかりあたしの中で冷えていて、妙に心の中は冷々としている。
いや。
最初からあたしの中に熱いものなんてなかった。
部長の体温があたたかったから、そんな気になっただけ。