Fahrenheit -華氏-
『Matter of TOYO Express was you got me.(トーヨーエクスプレスの件は君にしてやられたよ) 』
「So what?(だから?)It's no big deal.(大したことじゃないわ)To say it, have you purposely called it?(それを言うためにわざわざかけてきたの?)」
Hoity-toity(呆れた)とこぼし、あたしは額に手をやった。
『Not only that.(それだけじゃない)When the other day your cellular phone was called, a man answered the telephone. (この前君の携帯に電話したとき、男が出たね)Is he your new boyfriend?(君の新しい彼氏?)』
あたしはやや大げさに肩をすくめて見せた。
バカみたい。
電話の相手にこの仕草が見えるわけじゃないのに。
でもあまりにも馬鹿げた質問にそうせざるを得なかった。
「No way(違うわよ)He is a superior in the company.(彼は会社の上司)There was a problem of misplacing the cellular phone. (ちょっとトラブルがあって携帯が入れ違っちゃっただけ)
Did you want to hear it?(それが聞きたかったの?)I have nothing to do.(あたしは用がないの)
I really have to go now.(切るわね)」
そういい置いてあたしは携帯を耳から離した。
タバコは根元まで灰になっている。
灰皿を手繰り寄せ、吸殻を捨てようとしたときだった。
『Wait!(待って!)』
“彼”にしては珍しく余裕のない緊迫した大きな声が受話口から聞こえ、あたしは眉を吊り上げながらも携帯を耳に当てた。
一呼吸も二呼吸も置いて彼はたっぷり深呼吸して、
『Hey Louie!(なぁ、ルーイ)』
と良く通る声であたしを呼んだ。