Fahrenheit -華氏-

だけどこれは喜びの笑顔じゃない。





「Don't say such silly things!(バカなこと言わないでよ!)

Do you even know what you did?(あんたが何をしたか分かってる!?)

You deprived me of that child and my company!(あんたはあたしからあたしの会社とあの子を奪った!)」


早口に言い切った。


あたしは息を整える為に肩を前後させる。


息の合間に嗚咽が混じった。





I love you.(愛してる)って言った。

I never want us to part.(ずっと一緒にいたい)とも言った。

You are all I've got.(俺には君しかいない)と言った。




嘘ばっかり。




何で……


何で、別れた後もあたしを苦しめるの?


何で傷つけるの??


何で―――





カタンっ




小さな物音がしてあたしは振り返った。



リビングの入り口に―――





困惑した様子で眉を寄せた部長が




立っていた。







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