Fahrenheit -華氏-

「絶対に嫌!」


なんて断られることを覚悟してた。


ゴメンナサイ。ほんのちょっと言ってみたかっただけで…


なんて言い訳を考えてると、


「いいですよ。その方が手っ取り早いし」


と柏木さんの意外な言葉が返って来たとき俺はびっくりして目を丸めた。


てか、一緒に居たいとか甘いことじゃなくて、手っ取り早いなんて合理的な考えなんですね。


ま、いいけど。


俺の方がまだまだ一緒に居たかったから、ちょっと嬉しかったり♪


そんなわけで柏木さんと一緒にお風呂♪


バスルームは広かった。


バスタブや洗面台などはすべて白亜の大理石造り。


窓は三角形に張り出しており、その先端にバスタブが配置されているので、ぽっかりと東京の景色の中に浮いているかのような感覚が楽しめる。


しかもジャグジー機能つきだ。


バスタブの中を泡に満たして、俺はゆっくりと風呂に浸かる柏木さんをじっと見た。


柏木さんは濡れた前髪をピンでトップで止め、後ろの長い髪も一つに止めている。


もちろん化粧も落として……


……ってか…


「柏木さんのすっぴん初めて見たかも」


俺は柏木さんに顔を近づけると彼女の顔をまじまじと覗き込んだ。


「あんまり見ないで下さい」


柏木さんは恥ずかしそうに眉を寄せると、ぷいと横を向いた。


< 239 / 697 >

この作品をシェア

pagetop