Fahrenheit -華氏-
「やっぱり!柏木さんって俺の超好み!!」
「はい?」
俺が声をあげたので、柏木さんはちょっとびっくりしたように俺に向き直った。
だって化粧を落としても、やっぱりすっげー可愛いんだもん。
てか若返った?未成年でも通るぐらいの童顔だ。
「くっそぅ、どストライクだぜ」
俺は顎に手をやると、ちょっと顔を逸らした。
正直あんまり真正面から見れなかった。
心臓がドキドキいって爆発しそうだったから。
「ストライク…?」
「そう、好みの顔ってこと」
「ああ…」
柏木さんはちょっと納得すると、俺を見た。
「部長はあたしにとってボールですね。しかもフォアボール、ランナー一塁」
フォ…フォアボールですかい…
しかも一塁って…
ランナー走っちゃいましたか。
柏木さんにとって俺の顔ってやっぱどうでもいいわけね…
ちょっと悲しくなってしゅんと落ち込んでると、
「嘘ですよ。あたし…部長の目が―――好きです」
立てた膝に顔を埋めるようにして柏木さんは小さく言った。