Fahrenheit -華氏-
「は、話は変わるけどこんな広い部屋に一人って寂しくない??」
柏木さんはちょっと目だけを上げた。
「本当に(話が)変わりましたね。まぁ寂しいって思うときはありますよ…最近ちょっとペットを飼うことを考えてます」
「ペット!いいね♪俺だったら猫がいいな~♪んで、ルカって名前にしてめっちゃ可愛がるの☆溺愛するかもっ」
言ってはっとなった。
柏木さんが泡の湯に顎の先を浸からせて、おっそろしい目つきで俺を睨んでいる。
「いや!これはその…」
俺が慌ててわたわたと手を振ると、
「…あたしは犬が欲しいです。大きい…そうですね、ゴールデンレトリバーとか。それでケイトって名前をつけます」
か、柏木しゃん……
嬉しくなって俺も同じように泡の中に顎を突っ込んだ。
でも
「それでケイトをめっちゃ苛めます」
なんて聞いちゃった俺はサーと顔色を変えた。
か、柏木しゃん…俺をそこまで毛嫌いする??
だけど柏木さんは俺のそんな不安をよそに涼しくふっと笑った。
「嘘ですよ。犬は、当分飼いません。
しばらくは…そうですね、部長でいいです」