Fahrenheit -華氏-
―――遡ること一時間前――
俺は柏木さんのマンションを出るとそのままの足で裕二のマンションに向かった。
時間は朝の7時。
迷惑を顧みずインターホンを押すと、迷惑そうな寝起きの顔で裕二が顔を出した。
「ゆ~じぃいい」
情けない声で泣きつくと、裕二の後ろから
「だぁれ?こんな朝っぱらから」
と女の声がした。
いや、今更女の声にはビビるまい。
遊び人裕二が女を連れ込んでることも容易に想像できる。
が、しかし!!
「あ、綾子~~~!!?」
俺は眠そうに目を擦りながら登場した綾子を指で指して大声をあげた。