Fahrenheit -華氏-
「お前こそナニ?昨日と同じカッコじゃん」
インスタントコーヒーを出しながら裕二が意味深に笑った。
「また朝帰りぃ?あんたもよくやるわよね」
綾子が呆れたように呟くと、タバコに火をつけソファにふんぞり返った。
ってか、ここはお前んちかよ!
くつろぎすぎだ!バカ女!!
自分んちでさえ、優雅な物腰だった柏木さんとは大違いだぜ。
柏木さん……
思い出して、俺はうな垂れた。
結局去り際までちゃんと言い訳ができなかった。
月曜日どんな顔して会えばいいの?
「落ち込んでるな…何かあったのか?」
裕二が俺の隣に腰掛けた。
手にはコーヒーの入ったマグカップを持っている。
「仕事?まぁあんたが女のことで落ち込むようなタマじゃないわよね」と綾子。
「仕事でもこんなに落ち込まないだろ?元来が啓人は楽天家なんだぜ」
なんて裕二が軽く笑う。
二人とも俺の落ち込みを無視して、けらけら笑ってる。
「裕二!てめっ!大体お前のせいでもあるんだぞ」
俺は裕二をキッと睨み上げた。