Fahrenheit -華氏-
「でもすごいなぁ。同じ歳で、全然立場が違うやぁ。それに柏木さん歳相応に見えますよ。やっぱりまだまだ若いですって!」
佐々木が目をぱちぱちさせて感心している。
佐々木。お前、俺の株を奪いやがって。
「そうですか?私が18の時に前の会社を立ち上げたので、それに比べれば大したことじゃないと思いますけど」
なぬ!?18で起業だとぅ!!!
ってことは、柏木さんは社長様であられたわけで。
親父が惚れ込んで、半年もかけて口説いたってのはだてじゃないんだな。
まぁでも、従業員1名でも会社は立ち上げられるしぃ。
なんて負け惜しみめいた考えを浮かべる俺って、どうなの?
「と、とりあえず管理職の場合車通勤が認められるから、柏木さんもそうするといいよ。車持ってる?」
俺は何とか話題を逸らすと、引きつった笑みで柏木さんを見た。
「車は持ってますけど、あんまり好きじゃないんで。それに実用的じゃないし」
「へぇ、ジープでも乗ってんの?運転あまり上手くないとか?でも一応申請だけはしておいてよ。いずれ気が変わったら通勤できるように」
俺は引き出しの中からマイカー通勤申請の用紙を取り出した。
申請用紙には氏名、部署、車種やナンバーを記入する欄がある。
柏木さんはそれを素直に受け取った。
「車何乗ってるの?」
俺は何気なく聞いてみた。
柏木さんはちょっと顔を上げると相変わらずの無表情でこう答えた。
「レクサスのLFA」